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機関誌「実験社会心理学研究」
第38巻 第2号
(1998年12月発行)
目次(INDEX)
一般論文
- 論 文
- ●北川歳昭:教室の座席行動と個人空間―教師への距離の調整としての学生の着席位置―
- ●坂元 桂・坂元 章:抑鬱とムードが社会的比較に及ぼす効果
―自己開示記述法とフィードバック法― - ●長谷川孝治・浦 光博:アイデンティティー交渉過程と精神的健康との
関連についての検討 - ●堀内 孝:自己知識と記銘材料の特質が自己関連付け効果に及ぼす影響
- ●安達智子:大学生の就業動機測定の試み
- ●木村泰之・都築誉史:集団意思決定とコミュニケーション・モード
―コンピュータ・コミュニケーション条件と
対面コミュニケーション条件の差異に関する実験社会心理学的検討― - ●和田 実:大学生のストレスへの対処,および
ストレス,ソーシャルサポートと精神的健康の関連―性差の検討―
特集論文
―地域医療とグループ・ダイナミックス―
- ●杉万俊夫:実践としてのグループ・ダイナミックス
- ●早川一光:住民の中へ 住民と共に―町衆の医療―
- ●孫 冶斌:住民運動としての地域医療―京都「西陣健康会」の50年
- ●横山和佳子・藤原尚子・西田光代・金辻治美・藤井朱美・味田真理子:
高齢者介護に関する保健婦の実践研究―介護者の語りを住民と共有する―
書評
- ●杉万俊夫:大橋英寿(著)「沖縄シャーマニズムの社会心理学的研究」
- ●長谷川寿一:山岸俊男(著)「信頼の構造」
- ●森 永壽:William Cockerham (著)「This Aging Society(2nd. Ed.)」
ザンダー博士を偲んで(鈴木康平)
一般論文 / 論文 (要約)
教室の座席行動と個人空間―教師への距離の調整としての学生の着席位置―
北川歳昭(中国短期大学)
本研究の目的は,教室における学生の着席位置が個人空間(personal space)の概念によって説明できるかどうかを検討することである。2つのクラス計151名の女子短大生の受講時の着席位置が,1学期の間,10回にわたって追跡記録された。その着席位置に従って,学生たちは,4つのゾーン群(前方,中央,後方,左右両端)に分けられた。学期の最終講義の時に,学生たちは,対人距離テストを受け,その中で,親近性の異なる3人物と面談するときの最適距離をそれぞれ示すように求められた。結果によると,着席ゾーンが前方であるほど,そして,対象人物の親近性が高いほど,対人距離スコアが低かった。これは,教室の前後軸に沿った学生の着席位置が教師との距離の調整の反映であることを示唆している。
キーワード:教室の座席行動,個人空間,着席位置,対人距離
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抑鬱とムードが社会的比較に及ぼす効果―自己開示記述法とフィードバック法―
坂元 桂(お茶の水女子大学・日本学術振興会)・坂元 章(お茶の水女子大学)
抑鬱とムードが社会的比較に及ぼす効果を見出し,その後の研究に大きな影響を与えたものとして Gibbons (1986)がある。本研究は,大学生に対して2つの実験を行い,彼の見出した効果などを再検討したものである。実験1では,彼とほぼ同様のムード導入の手続き(自己開示記述法)を用いて,彼の結果が再現されるかどうかを検討した。その結果,ムードの効果は有意でなかったが,抑鬱者が非抑鬱者よりも下方比較を行うことが示され,彼の結果が部分的に追証された。実験2では,彼とは異なる手続き(偽りのフィードバック法)を用いて,実験1と同様の効果を検討した。その結果,抑鬱の効果は有意でないこと,また,ネガティブムード群の被験者がポジティブムード群の被験者よりも上方比較を行うことが示された。これは,彼の結果と全く異なるものである。また,2つの実験を通じて,抑鬱者において,場合により,下方比較とポジティブな自己認知の間に相関があることが見出された。以上の結果に基づいて,彼の結果の一般性と妥当性を議論した。
キーワード:社会的比較,ムード,抑鬱
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アイデンティティー交渉過程と精神的健康との関連についての検討
長谷川孝治(広島大学)・浦 光博(広島大学)
本研究では,アイデンティティー交渉過程(Swann,1987)が,個人の精神的健康に及ぼす影響について,検討した。このアイデンティティー交渉の枠組みでは,自己評価と他者の評価とのズレの低減のされ方に,自己評価が他者の評価に近づく形(評価の効果)と他者の評価が自己評価に近づく形(自己確証の効果)の2つがあり,そこで生じるズレ低減が個人の精神的健康を導くとされる。本研究では,このような2種類のズレ低減の方向性に加えて,先行研究において明確にされてこなかった,「自己評価と他者の評価の相対的な高さ」に着目した。研究1の結果,自己評価が他者の評価よりも低い群(相対的自己評価低群)では,他者の評価が下がる形のネガティブな確証(ズレの低減のされ方)は個人の適応を阻害し,自己評価が上がる形のポジティブな確証は個人の適応を促進することが示された。一方,自己評価が他者の評価よりも高い群(相対的自己評価高群)では,このような関連は見られなかった。両群のこのような結果の差異は,アイデンティティー交渉過程そのものの違いによることが,研究2の結果から明らかになった。すなわち,相対的自己評価低群は高群に比べて,自己評価や他者の評価が不安定であり,しかも自らの低い自己評価に他者の評価を近づける交渉を行っていたのである。そして,適応の水準そのものに関しても,相対的自己評価低群は高群よりも低かった。本研究の結果から,自己評価の低い個人の社会的相互作用は機能障害的であることが明らかにされた。また,対人関係と適応の関連における,自己過程のもつ仲介機能についても考察された。
キーワード:アイデンティティー交渉,相対的自己評価,精神的健康
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自己知識と記銘材料の特質が自己関連付け効果に及ぼす影響
堀内 孝(日本学術振興会・名古屋大学)
本研究では自己記述課題(あなたにあてはまりますか?)を用いた自己関連付け効果の生起要因について,自己知識と記銘材料(形容詞)の特質という観点から検討を行った。実験1では,関連付ける自己知識の領域によって自己関連付け効果の生起パタンが異なるか否かについて検討した。その結果,中心的な領域(被験者の性格特徴)に記銘語を関連付ける処理を行った場合には自己関連付け効果は得られたが,周辺的な領域(被験者の足や目)に関連付けても自己関連付け効果は得られなかった。実験2では,記銘材料に関して,自己知識の記述性と熟知度を操作した。その結果,性格を記述し日常よく使用する記銘語においてのみ自己関連付け効果は得られた。これらの結果は,自己関連付け効果の生起には,豊富な自己知識領域に適切な記銘語を関連付けることが必要であることを示唆するものである。
キーワード:自己関連付け効果,自己関連付け処理,自己知識,記銘材料
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大学生の就業動機測定の試み
安達智子(早稲田大学)
本研究では,未入職者における将来の職業に関連した動機に注目し,大学生を対象とした測定を試みた。ここでは就業動機を,未入職者が未来の仕事状況に関連してもっている動機,または,将来携わる職業的場面を想定した動機と定義した。文化系の学部に所属する大学生257名(男子135,女子121,不明1)より得られた回答を因子分析したところ4因子が見出された。「探索志向」は,将来携わる仕事に関する情報を収集するなど職業に対する積極的姿勢,「挑戦志向」は,困難な作業に挑戦して仕事によって自己成長しようとする傾向,「対人志向」は,仕事を通じた人との接触を志向する傾向,「上位志向」は,社会的地位や名声を得ようとする傾向であると解釈出来た。α係数と項目-尺度間相関を検討した結果,職業的動機づけ尺度は十分な信頼性を有することが確認出来た。つづいて,性格特性,職業価値観,成功回避動機との関連を検討したところ,就業動機の各側面の特徴がより明確化された。
キーワード:就業動機,大学生,因子分析,職業選択,職業意識,
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集団意思決定とコミュニケーション・モード
―コンピュータ・コミュニケーション条件と
対面コミュニケーション条件の差異に関する実験社会心理学的検討―
木村泰之(立教大学)・都築誉史(立教大学)
本研究では,近年急速に普及しつつあるコンピュータ・コミュニケーションの特質を社会心理学的に検討した。集団意思決定における集団極化現象を扱ったコンピュータ・コミュニケーション条件と対面コミュニケーション条件による実験を行い,両コミュニケーション・モード間における差異について検討を加えた。被験者は3人1組の実験集団を構成し,ジレンマ課題におけるリスク水準決定を行った。コンピュータ・コミュニケーション条件では対面コミュニケーションに比べ,コミュニケーション当事者から受ける緊張感や心理的負担といった対人圧力が減少することが分かった。こうした対人圧力の減少によって,通常言われているコンピュータ・コミュニケーション上での立場の平等化という現象が説明可能であることが示唆された。コンピュータ・コミュニケーション条件で,集団極化現象が観察され,対面コミュニケーションに比べ,よりリスキーな意思決定を行いやすいことなども確認された。その他,第1発言効果の検証を行った。
キーワード:集団極化,コンピュータ・コミュニケーション,第1発言効果
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大学生のストレスへの対処,およびストレス,ソーシャルサポートと
精神的健康の関係―性差の検討―
和田 実(東京学芸大学)
本研究は,大学生がストレスにどのように対処しているのか,また男女で対処法に違いがあるのかを調べた。さらに,ソーシャルサポートはストレス低減に有用かどうかも調べられた。被験者は大学3年生285(男性114,女性171)人であった。自分の将来のこと,勉強のこと,友人・仲間のこと,自分のこと,余暇,異性のこと,教師・授業について,両親・家族とのこと,の8つのストレッサーが用いられた。対処法は,積極的解決の試み,積極的回避,忍耐,支援要請,消極的回避の5つであった。男性よりも女性の方がストレスとサポートが多かった。対処法で一番多いのが,男女とも消極的回避であった。忍耐は低より高ストレス者,消極的回避は高より低ストレス者がより多く選択した。低サポート者より中サポート者,中サポート者よりも高サポート者の方が孤独でなかった。しかし,サポートは疾病徴候には何の効果も示さなかった。すなわち,ソーシャルサポートはストレスに対して限られた効果しか持たないのである。
キーワード:阪神・淡路大震災,地域社会,地域防災,まちづくり,非営利組識(NPO)
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特集論文 / ―地域医療とグループ・ダイナミックス― (要約)
住民運動としての地域医療―京都「西陣健康会」の50年―
孫 冶斌(京都大学)
本研究は,大学生がストレスにどのように対処しているのか,また男女で対処法に違いがあるのかを調べた。さらに,ソーシャルサポートはストレス低減に有用かどうかも調べられた。被験者は大学3年生285(男性114,女性171)人であった。自分の将来のこと,勉強のこと,友人・仲間のこと,自分のこと,余暇,異性のこと,教師・授業について,両親・家族とのこと,の8つのストレッサーが用いられた。対処法は,積極的解決の試み,積極的回避,忍耐,支援要請,消極的回避の5つであった。男性よりも女性の方がストレスとサポートが多かった。対処法で一番多いのが,男女とも消極的回避であった。忍耐は低より高ストレス者,消極的回避は高より低ストレス者がより多く選択した。低サポート者より中サポート者,中サポート者よりも高サポート者の方が孤独でなかった。しかし,サポートは疾病徴候には何の効果も示さなかった。すなわち,ソーシャルサポートはストレスに対して限られた効果しか持たないのである。
キーワード:高齢社会,住民運動,地域医療,地域づくり,役柄の物象化
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高齢者介護に関する保健婦の実践研究―介護者の語りを住民と共有する―
横山和佳子(加茂町役場)・藤原尚子(精華町役場)・
西田光代(精華町役場)・金辻治美(京都府木津保健所)・
藤井朱美(京都府木津保健所)・味田真理子(京都府木津保健所)
本研究は,大学生がストレスにどのように対処しているのか,また男女で対処法に違いがあるのかを調べた。さらに,ソーシャルサポートはストレス低減に有用かどうかも調べられた。被験者は大学3年生285(男性114,女性171)人であった。自分の将来のこと,勉強のこと,友人・仲間のこと,自分のこと,余暇,異性のこと,教師・授業について,両親・家族とのこと,の8つのストレッサーが用いられた。対処法は,積極的解決の試み,積極的回避,忍耐,支援要請,消極的回避の5つであった。男性よりも女性の方がストレスとサポートが多かった。対処法で一番多いのが,男女とも消極的回避であった。忍耐は低より高ストレス者,消極的回避は高より低ストレス者がより多く選択した。低サポート者より中サポート者,中サポート者よりも高サポート者の方が孤独でなかった。しかし,サポートは疾病徴候には何の効果も示さなかった。すなわち,ソーシャルサポートはストレスに対して限られた効果しか持たないのである。
キーワード:阪神・淡路大震災,地域社会,地域防災,まちづくり,非営利組識(NPO)
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