機関誌「実験社会心理学研究」

第39巻 第1号

(1999年6月発行)

目次(INDEX)

一般論文
論文
高田利武:日常事態における社会的比較と文化的自己観―横断資料による発達的検討―
佐久間勲・岡 隆:知覚的バイアスとステレオタイプ形成
 ―同化効果と対比効果による変動性の知覚の変化―
竹澤正哲:社会的ジレンマの解決において不公正感が果たす役割
小出 寧:ジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成
伊藤君男:説得事態における信憑性と期待の効果
 ―ヒューリスティック手掛かりの組織的情報処理に対する影響―
藤島喜嗣:低自尊心の人の自己肯定化の検討
 ―課題成績の原因帰属における公的な自己肯定化の効果―
 

資 料

諸井克英:特別養護老人ホーム介護職員におけるバーンアウト
 

展 望

牧野幸志:説得に及ぼすユーモアの効果とその生起メカニズムの検討
 
 

一般論文 / 論文 (要約)

日常事態における社会的比較と文化的自己観
―横断資料による発達的検討―
高田利武(奈良大学)

日常事態における社会的比較の様態に関して,青年期を中心とした発達的変化と文化的自己観との関連を検討するため,小学校高学年から中年成人に至る6つの年齢段階群の対象者に対して,質問紙調査が実施された。比較の対象,相手,理由に基づく数量化3類の解析を通じて,2つの社会的比較の類型―内的・自己志向的比較と外的・他者志向的比較が見出された。青年期は他の時期に比べて,社会的比較の頻度が高く,かつ外的・他者志向的比較が優勢であった。また,日本文化に優勢な相互協調的自己観をもった者に,その傾向が顕著であった。これらの結果から,個人の自己概念の発達において,文化的自己観が反映される過程での社会的比較,就中,外的・他者志向的社会的比較の重要性が示唆された。

キーワード:社会的比較,相互協調的自己観,発達的検討,日本人青年

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知覚的バイアスとステレオタイプ形成
―同化効果と対比効果による変動性の知覚の変化―
佐久間勲(東京大学)・岡 隆(東京大学)

本研究の目的は,知覚的バイアスである同化効果と対比効果がステレオタイプの形成に寄与していることを示すことであった。実験1では,集団の成員情報の分布(変動性小/変動性大)と集団サイズ(小/大)を操作した成員情報を提示した後に,変動性の知覚を測定した。その結果,変動性小条件において,集団サイズ小条件と比較して集団サイズ大条件で変動性を小さく知覚していた。実験2では,被験者に(1)成員情報を再生する(実例記憶条件),(2)集団の平均を回答する(平均推定条件),(3)いくつかの質問に回答する(統制条件)といういずれかの教示を与えた後に,成員情報を提示した。その結果,平均推定条件で,実験1と同じ結果が得られた。以上の結果は,成員情報が符号化されるにしたがって形成される中心傾向に,新たに符号化される成員情報が同化したために生じた効果であると解釈された。

キーワード:キーワード:ステレオタイプ形成,変動性,知覚的バイアス,同化効果,対比効果

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社会的ジレンマの解決において不公正感が果たす役割
竹澤正哲(北海道大学)

不公正是正を目指す集合行動には,多くの場合社会的ジレンマの問題が存在している。本研究は,不公正感が喚起されることによって,集合行動における社会的ジレンマが解決されるプロセスを検討するものである。人々は不公正感が喚起されることによって,不公正是正を目指した相互協力の達成を重視するよう動機づけられるだろう。しかしこれまでの社会的ジレンマ研究では,他者の協力に対する期待が存在していない限り,協力への動機づけが高まるだけでは社会的ジレンマにおける協力行動は生まれないとされてきた。これに対し本研究は,社会的ジレンマにおける協力にとって必要な二つの要因―協力への動機づけと他者の協力への期待―が不公正感の喚起により同時に生み出される可能性に注目する。すなわち,集団成員の間で不公正感が共有される場合には,個々の成員の協力への動機づけが高まるだけでなく,他成員も同様に協力することを動機づけられているだろうという期待も,同時に高まるだろうと考えられる。本研究は二つの実験を用いて,この観点に基づいて提出された一連の仮説を検討した。実験の結果,仮説はおおむね支持された。さらに,不公正感の喚起によって社会的ジレンマが解決されるプロセスは,社会的ジレンマの利得構造が結合型と分離型のどちらの形を取るのかに応じて変化することが実験を通じて示された。

キーワード:不公正感,社会的ジレンマ,集合行動,社会的動機,期待

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ジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成
小出 寧(早稲田大学)

本研究では,形容詞による性格特性語によらず,行動や意識による項目で,男性性,女性性に加え,女性のセックス・アピールの3側面からジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成を行ない,信頼性・妥当性を確かめることを目的とする。その際,構成概念妥当性を確かめるため,性役割行動とフェミニスト志向を取り上げる。方法は質問紙法で,学生(男性117人,女性117人)を対象に調査を行なった結果,尺度の信頼性・妥当性が確認され,主に次の知見を得ることができた。それは,(a)ジェンダー・パーソナリティ・スケールは性別との対応関係の高い尺度であり,(b)その下位尺度間の関連から,女性にとってセックス・アピールとは,単に女らしさの強調といった意味合いだけでなく,女性が男性中心社会の中で自己を主張していく表現法としての意味合いも込められていると推察され,(c)男女を問わず男性性の高い人が議長を快く努められ,男女を問わず女性性の高い人がお茶くみを快く努めることができ,(d)女性は,男性性が高いほどフェミニスト志向が強くなり女性性が高いほどフェミニスト志向が弱くなることが判明した。

キーワード:男性性,女性性,女性のセックス・アピール,フェミニスト志向,ステレオタイプ

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説得事態における信憑性と期待の効果
―ヒューリスティック手掛かりの組織的情報処理に対する影響―
伊藤君男(愛知学院大学)

本研究の目的は,Chaiken(1980)の簡便即断処理および組織的情報処理モデルが想定しているように,簡便即断処理と組織的情報処理,この2つの過程は同時に生起したり,影響を与え合ったりするのかを検討することである。加えて,簡便即断処理の中で,複数のヒューリスティック手掛かりが態度変容に影響を与えるか否かも検討する。被験者は大学生295名で,「大学への卒業試験の導入」を説得話題とし,「関与」「論拠の質」「信憑性」「期待」の変数を操作して,実験をおこなった。その結果,精査しようとする動機づけが高い被説得者であっても,「信憑性」というヒューリスティック手掛かりによって態度得点の相違が認められ,2つの処理過程が同時に生起していることが示唆された。また,「信憑性」と「期待」という2つのヒューリスティック手掛かりが,同時に態度に影響を与えるのではなく,どちらか一方だけが態度に影響を与える可能性が示唆された。

キーワード:簡便即断処理および組織的情報処理,ヒューリスティック手掛かり,信憑性,期待

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低自尊心の人の自己肯定化の検討
―課題成績の原因帰属における公的な自己肯定化の効果―
藤島喜嗣(一橋大学)

本研究は,自己肯定化を公的な形式で行うことによって,低自尊心の人でも自己肯定化の効果が現れるかどうかを,課題成績の原因帰属過程において検討した。他者の前で自分のポジティブな側面を供述することで,低自尊心の人は,自己にポジティブな側面があることを確信し,自己肯定化が可能になると考えられる。そして,このような公的な自己肯定化は,課題の失敗をより自己卑下的に原因帰属させる効果を持つと予測される。実験は,成績フィードバック(成功・失敗) ×自尊心(高・低)×自己肯定化(あり・なし)の被験者間デザインで行われた。  主な結果は次の通りである。(1)被験者は一般的に自分の成績を自己卑下的に帰属する傾向にあった。(2)低自尊心の人は,公的な自己肯定化の機会を与えられると,与えられない場合と比べて,失敗の原因をより自己卑下的に原因帰属する傾向にあった。高自尊心の人ではこのような違いは認められなかった。本研究の結果は,低自尊心の人は,公的に自己肯定化をすることで,はじめて自己完全性への脅威に間接的に対処することができるようになることを示唆した。

キーワード:自己肯定化,低自尊心,公的状況,原因帰属,自己卑下的原因帰属傾向

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資 料 (要約)

特別養護老人ホーム介護職員におけるバーンアウト
諸井克英(静岡大学)

本研究では,特別養護老人ホーム介護職員を対象として,(a)バーンアウトの因子構造,(b)バーンアウトと性格特性や就職動機との関係が検討された。特別養護老人ホーム介護職員に質問紙が実施され,その質問紙には,Maslach-バーンアウト目録(MBI; Maslach & Jackson, 1981),新性格検査(柳井・柏木・国生, 1987),および就職動機尺度(筆者によって作成)が含まれていた。MBIについて主成分分析を行ったところ,予測通り,情緒的消耗感,個人的達成感の低下,および脱人格化という3主成分が現れた。新性格検査についても主成分分析が行われた。バーンアウトと性格特性や就職動機との関係を調べるために,重回帰分析が実施された。性格特性は,情緒的消耗感よりも,個人的達成感の低下や脱人格化と強い関係を示した。就職動機の場合にも同様な傾向がみられた。

キーワード:バーンアウト,Maslach-バーンアウト目録,新性格検査,ヒューマン・サービス,特別養護老人ホーム,就職動機

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展 望 (要約)

説得に及ぼすユーモアの効果とその生起メカニズムの検討
牧野幸志(広島大学)

本稿は,説得に及ぼすユーモアの効果を検討した先行研究の結果を整理し,ユーモアの効果とその生起メカニズムを検討することを目的とした。最初に,従来の実証的研究における3つの重大な方法論的問題点(実験計画上の欠陥,実験手続きの欠陥,分析方法の欠陥)を指摘した。それらの問題点をもたない適切な先行研究の分析から以下のことを明らかにした。まず,説得に及ぼすユーモアの主効果はみられないと報告する研究が多いが,ポジティブな主効果(促進効果)を示す研究が一部みられた。しかし,ネガティブな主効果(抑制効果)を示す研究は皆無であった。次に,ユーモアは8つの要因と交互作用することが明らかとなった。その方向は,説得効果の促進と抑制のいずれの方向でもみられた。この結果は,精緻化見込みモデルから解釈された。ユーモアの効果の生起メカニズムに関しては,説得過程の媒介要因と考えられるメッセージへの注意,メッセージの評価,および送り手への好意への促進効果と受け手の肯定的感情への促進効果が有力であることが示唆された。さらに,生起メカニズムを情報処理の観点から検討した。  最後に,今後の研究の方向性として,1)ユーモア刺激の種類と量の効果の検討,2)受け手のユーモアのセンスによる効果の違い,3)情報処理の観点からのユーモアの効果の生起メカニズムの再検討,の3点を指摘した。

キーワード:ユーモア,説得,精緻化見込みモデル,広告研究,態度

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掲載論文の要約の説明はここまでです。
 

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