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機関誌「実験社会心理学研究」
第42巻 第1号
(2002年9月発行)
目次(INDEX)
- 原著論文
- ●原田耕太郎:報酬分配における分配者の公正動機の充足度が
分配者の被分配者に対する言語メッセージに及ぼす効果 - ●中村國則:評定に対する評定方法の相違の影響と処理プロセスとの関連
- ●樂木章子:乳児院の集団的・組織的特徴と乳児の発達
- ●高口央・坂田桐子・黒川正流:集団間状況における複数リーダー存在の効果に関する検討
- 資料論文
- ●山口一美:自己宣伝におけるスマイル、アイコンタクトとパーソナリティ要因が
就労面接評価に及ぼす影響 - ●矢守克也:災害の「風化」に関する基礎的研究(II)
―マスメディアの報道量とマクロ行動変数による測定と表現― - ●戸塚唯氏・深田博己・木村堅一:
受け手自身あるいは家族を脅威ターゲットとする脅威アピールの効果
一般論文 / 原著論文 (要約)
報酬分配における分配者の公正動機の充足度が分配者の被分配者に対する言語メッセージに及ぼす効果
原田耕太郎(徳島文理大学)
報酬分配場面において,分配者は,多くの場合,公正な報酬分配を行うよう動機づけられていると考えてよいであろう。本研究の目的は,分配者による報酬分配の公正認知が低い場合に公正認知が高い場合と比べて,言語メッセージの量が多くなり,なかでも,被分配者にとって心理的報酬となるような内容の言語メッセージが多くなるという予測を検討することである。本研究では,分配者による報酬分配の公正認知を,被分配者の業績,能力,努力の量的相違と,分配者─被分配者の交換関係継続の有無によって,操作した。大学生122名が実験に参加した。実験の結果,被分配者間に能力差がある条件の方が,能力差が無い条件と比べて,分配者による報酬分配の公正認知が低かった。また,これらの条件間で,メッセージの量に差はみられなかったが,前者よりも後者の条件で,被分配者にとって心理的報酬となるような内容の言語メッセージが多く観察された。さらに,このような言語メッセージの使用と公正認知との関連性が示唆された。しかし,言語メッセージ使用による公正さの向上の程度は,有意傾向であった。
キーワード:公正さ,報酬分配,分配者
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評定に対する評定方法の相違の影響と処理プロセスとの関連
中村國則(早稲田大学)
従来の社会的認知モデルは,主に社会的対象の性質に注目し,処理過程を記述している。しかしこれまで,同じ対象に対する評定であっても客観的な数値に基づいて行うか(客観的評定),主観的な印象に基づいて行うか(印象評定)によって評定結果が相違することが知られている。従来の社会的認知モデルでは,この相違を説明できない。本研究の目的は,両評定の相違の背後に存在する処理過程を検討することである。本研究は,代替帰結効果(Windschitl and Wells, 1998)に基づいて,両処理過程の相違を関連する事象間の比較プロセスの相違と解釈し,2つの実験を行った。実験1では,関連する比較事象が存在しない状況で,実験2では,関連する比較事象が存在する状況で,被験者は架空の国における疫病対策プログラムの効果を評価することを,両評定で求められた。その結果,実験2において両評定の相違が確認された。以上の結果から,客観的評定と印象評定との相違を確認し,両評定の相違が比較プロセスの影響にあることを示した。また,社会的認知に対する幾つかの示唆を論じた。
キ−ワ−ド:社会的認知モデル,客観的評定,印象評定
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乳児院の集団的・組織的特徴と乳児の発達
樂木章子(京都大学)
乳児院の集団的・組織的特徴と乳児の発達の関係について検討するために,対照的な2つの乳児院(A乳児院とB乳児院)において事例研究を行った。A乳児院は高度な医療機能を有し,都会の高層ビルの中にある大規模施設であり, B乳児院は温かい家庭的処遇を指向した山間部の小規模施設である。2つの乳児院における集合的行動,ならびに,集合的行動の背後にあるコミュニケーションの特徴を検討した。すなわち,(1)「乳児―保育者」集合体,ならびに,職場集団における観察可能な集合的行動の相違,(2)コミュニケーション過程において形成される意味的差異の相違を検討した。その結果,A乳児院においては<効率−非効率>という差異が主導的であり,B乳児院においては<私物化−非私物化>という差異が主導的であることが見出された。また,それらの主導的差異によって構成される意味的世界は,互いにとっての外部をなしている世界―A乳児院(またはB乳児院)にとっては,B乳児院(またはA乳児院)に構成されているような意味的世界―によってゆらぎを与えられていることも示唆された。筆者の先行研究において,A乳児院で観察された(しかし,B乳児院では観察されなかった)乳児の行動,応答の指さし課題における通過率の高低,集団見立て遊びの成立・不成立等を,上記の集団的・組織的特徴の一側面として考察した。
キーワード:乳児院,乳児,集合的行動,コミュニケーション
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集団間状況における複数リーダー存在の効果に関する検討
高口 央(広島大学)・坂田桐子(広島大学)・黒川正流(九州女子大学)
本研究では,集団間葛藤・協力の文脈からなる仮想世界ゲームを用いて,複数のリーダーによるリーダーシップが,集団にどのような影響を及ぼすのかを検討した。各集団における公的役割を持ったリーダーを公式リーダーとし,集団内の1/3以上の成員から影響力があると評価された人物を非公式リーダーとした。両リーダーのリーダーシップ発揮形態に基づき,全集団を次に挙げる2つの基準で5つに分類した。分類の基準は,a非公式リーダーの有無,bリーダーシップ行動(P機能と集団内M機能,及び集団間M機能が統合された形(PMM)で発揮されているか)であった。この分担形態を用いて,集団へのアイデンティティ,個人資産について検討を行った。さらに,本研究では,集団間文脈において検討を行ったため,特にリーダーシップの効果性指標として,他集団からの評価,集団間関係の認知を採用し,それらについても検討を行った。その結果,複数のリーダーによってリーダーシップが完全な形で発揮された分担統合型の集団が,もっとも望ましい状態にあることが示された。よって,集団間状況においては,複数リーダーによるリーダーシップの発揮がより効果的であることが示唆された。
キーワード:集団内・集団間リーダーシップ,仮想世界ゲーム,複数リーダー,集団間状況
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一般論文 / 資料論文 (要約)
自己宣伝におけるスマイル,アイコンタクトとパーソナリティ要因が就労面接評価に及ぼす影響
山口一美(立教大学)
本論文では,自己宣伝の評価ならびに就労に関わる要因としてスマイル,アイコンタクトの表出とパーソナリティ要因に焦点をあてて検討した。女子大学生の就労希望者(24名)の自己宣伝の場面をビデオ撮影し,研究1では就労希望者のパーソナリティと自己宣伝におけるスマイル,アイコンタクトの表出ならびに他者評価との関連を検討し,研究2では就労希望者のパーソナリティ要因および自己宣伝におけるスマイル,アイコンタクトの表出とサービス業への就労との関連を探った。その結果,研究1からセルフ・モニタリングの“自己呈示の修正能力”がスマイル表出の適切さの評価に,自己意識が人事評定に,また自己宣伝のスマイルがスマイル表出の適切さの評価ならびに人事評定に影響を及ぼしていることが示された。研究2ではセルフ・モニタリングの“自己呈示の修正能力”と自己意識が高く,スマイル表出が適切で,人事評定が事前の評価で高かった者がサービス業に採用され,就労する傾向をもつことが明かになった。
キーワード:自己宣伝,スマイル,他者評価,セルフ・モニタリングの“自己呈示の修正能力”,自己意識
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災害の「風化」に関する基礎的研究(II)
−マスメディアの報道量とマクロ行動変数による測定と表現−
矢守克也(奈良大学)
本研究は,災害・事故が集合的に風化するプロセス−社会的な現実感が特定の災害・事故から消失していく長期的かつ社会的な過程−を測定・表現する方法について検討したものである。まず,風化の長期的なトレンドを,マスメディアの報道量の長期変化を通して近似的に測定・表現した先行研究の成果を踏まえ,それを攪乱する2つの個別的な要因について実証的に検討した。具体的には,第1に,相次いで発生した複数の事象が相互に影響し,後続事象の発生によって先行事象に関する報道量が低下する現象(相互干渉現象)をとりあげた。第2に,事象の発生期日をピークとして,周期的かつ一時的に報道量が増加する現象(周期変動現象)について検証した。その結果,これらの現象は,一面では,マスメディア報道による風化現象の測定にとっての攪乱要因であるが,他面では,むしろ,災害・事故の風化現象に固有の社会過程を明示し,記述するために利用可能であることが示された。次に,マスメディア分析を補完する新たな方法として,災害・事故の発生後,人々が実際に示す行動(変数)を長期的に追尾する方法をいくつか提起し,その有効性を確認するとともに,こうした行動変数とマスメディア報道との関連性についても検討した。さらに,共同想起の概念に依拠して,本稿で検討した集合的な記憶と個人的な記憶との相互連関についても論じた。
キーワード:自然災害,風化,記憶,共同想起,社会的現実
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受け手自身あるいは家族を脅威ターゲットとする脅威アピールの効果
戸塚唯氏(広島大学)・深田博己(広島大学)・木村堅一(名桜大学)
本研究の目的は,脅威アピールを用いた説得メッセージにおいて,脅威に晒されていることを強調する脅威ターゲットとして受け手自身と受け手にとって重要な他者である家族を用いた場合の説得効果を比較検討することであった。独立変数は,(1)脅威ターゲット(受け手,家族),(2)脅威度(高,低),(3)対処効率(高,低)であった。249人の女子大学生を8条件のうちの1つに無作為に配置した後,被験者に説得メッセージを呈示し,最後に質問紙に回答させた。質問紙では,勧告した2つの対処行動に対する実行意図と肯定的態度を測定した。その結果,脅威度や対処効率が大きいほど,実行意図と肯定的態度の得点が大きくなることが明らかとなった。また実行意図の得点は,受け手ターゲット条件よりも家族ターゲット条件の方で大きいことが明らかとなった。本研究で得られた知見によって,重要な他者を脅威ターゲットとする説得技法が,説得効果を高めるために有用であることが示唆された。
キーワード: 説得,脅威アピール,防護動機理論,脅威ターゲット,重要な他者
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